音声制作
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日本の音声制作の現場:SIDE Tokyoのユニークなアプローチ
2023年後半に発表されたように、PTWの最高峰音声プロバイダーであるSIDEはこの度、日本の東京に新たなスタジオを開設しました。30年以上前に、PTWが初めて設立されたこの東京に世界レベルのゲーム音声サービスを始めることに至りました。
何故SIDE Tokyoが最高峰音声と謳えるのか?そしてゲームに高品質なオリジナル日本語音声制作を提供できている理由は何か? 音声&スピーチ技術担当SVPのOlivier Deslandesとスタジオヘッドの高尾博史氏の協力のもと、私たちはその真相に迫ってみました。
Olivier:私たちはヨーロッパと北米にすでに拠点を持ち、このタイミングで我々の最大のクライアントの近くにスタジオを持つべきだと感じていました。SIDEは20年以上日本のIPに携わっており、日本のゲーム業界の中心にいたいと強く考えています。
高尾:SIDEは、出演者との交渉、キャスティング、ディレクティング、収録、ポストプロダクションなど、通常の音声制作サービスを提供しています。さらにゲーム向けのオリジナルの日本語セリフ収録に力を入れています。
Olivier:オールインワンのサービスを提供できること - 私たちの音声、そしてPTWの幅広いビジネスは、開発の負担を軽減するために一から設計されています。それは、セリフ、音楽、サウンドデザイン、ミキシング、組み込みだけでなく、アート、QA、ローカライゼーション、プレイヤーサポートなど、すべてです。私たちは、規模の大きなブティック型サービス・プロバイダーです。私たちの強みは、どんな規模のプロジェクトでも、どんなに複雑なプロジェクトでも、すべてのクライアントにパーソナライズされたサービスを提供できるということです。
他の拠点と同様に、SIDE Tokyoも高品質なキャラクターパフォーマンスとオーダーメイドのサービスをモットーに発展していくでしょう。
高尾:設備ができるだけ多目的に利用できるように設計されていることも、私たちの存在感を高めてくれています。SIDE TOKYOでは広めのブースを用意し、グループレコーディングなどの様々な収録形態に対応できます。またサラウンドもあるのでダビングも可能です。
高尾:日本では近年、アニメ・ゲームなどのメディアにおいて声優という職業が非常に注目されています。国民的な知名度を誇る声優もいらっしゃいますし、声優の数も年々増えています。そのため職業としての競争率が非常に高く、みなさん日々しのぎを削っています。
海外から見ると、日本の声優のお芝居は独特な感じがするかもしれません。アニメカルチャーの影響からか、演技の振れ幅が非常に広く、感情的にもダイナミックな表現が好まれる傾向があると思います。一方で英語の声優の演技を聞いていると、より現実世界に近いお芝居をされているような印象を受けます。日本に比べてキャラクターをデフォルメする割合が小さく、あくまでも自然な表現を心がけているように聞こえます。演技のスタイルは各言語で異なり、どちらが優れているという話ではありません。それぞれに良さがあると思います。
Olivier:日本はキャスティング、キャラクター設定、演技に対するアプローチが非常に特殊です。保守的であると同時に革新的なのです。私たちは世界中の拠点での経験を生かし、専門知識と選択肢を提供することで、クライアントに新しいアプローチを提案することを目指しています。
高尾:クライアントのニーズに合わせて、さまざまなキャスティング方法で適切な声優を探します。キャスティング方法としては、データベースからキャスティングする方法、セルフテープオーディション、スタジオオーディションなどがあります。
データベースからキャスティングする場合、データベースに保存された既存の音声クリップを使用してオーディションが行われます。これにより、専用のオーディションセッションを行うことなく、俳優の声域と特定の役柄への適性を迅速に評価できます。
セルフテープオーディション方式では、ゲームに使われる実際の台本を俳優に渡し、セリフを読んでいるところを録音してもらいます。録音は、私たち(とクライアント)によって吟味され、俳優がその役に合っているかどうかが判断されます。
最後に、スタジオオーディション方式では、俳優をスタジオに招き、ボイスディレクターの指導のもと、台本を読んでもらいます。この場合、俳優の演技をリアルタイムで評価し、クライアントの意図に沿った演技になるよう即座にフィードバックを提供できます。
Olivier:各コンテンツはプラットフォームやフォーマット、コンテンツの種類、さらには視聴者の種類によって歴史的に分断されてきたため、ビジネスモデルや予算、プロセスにおいてかなり異なってきました。そして企業はどちらかに特化する傾向がありました。しかし最終的にはストーリーとパフォーマンスという基本的な部分、そして質の高いコンテンツを提供するという最終目標は共通しており、似ています。私たちはこれらのすべての切り口で強い共通点があり、収束が起こっていると感じています。
高尾:映像作品(アニメ含む)は1話あたりの予算ありきで収録を行います。一方で、ゲーム収録のビジネスモデルは実際の作業量に応じて費用がかかっていきます。
プロセスの面でいうと、映像作品はグループレコーディングが一般的ですが、ゲーム収録は主に抜き録りで進めていく、且つレギュラーという概念がないので、役者のブッキングなどのプロセスも異なります。グループレコーディングの良い点は、シナリオ頭から流れでレコーディングするためシナリオの理解度や、セリフのテンション感を合わせやすい点があります。個々の録音間で一貫性を維持するのが、ゲーム音声で神経を使う部分です。ボイスディレクターによる専門的な指導と、プロセス全体を通してアクティブなアセット管理ツールが必要になります。
高尾:そもそもそこまでインハウスで収録している比率は高くないような気がします。自社スタジオを持っている会社もありますが、すべての自社タイトルの収録を自社スタジオだけで賄うことは難しいでしょう。弊社と一緒に仕事をするメリットとしては、収録した日本語アセットをそのまま海外拠点に展開できるので、クライアントの手間は減ると思います。
Olivier:Tokyoスタジオはその地位を確立するため、定評あるSIDE品質とサービスを確実にお届けすることを目指しています。ゆくゆくは、素晴らしいゲームやキャラクターパフォーマンスを制作するうえでの皆様のパートナーとなることが目標です。私たちの仕事ぶりを見てもらうことで、その素晴らしさが伝わると信じています。PTWのグローバルネットワークは、SIDE Tokyoによってより強固なものとなり、それがビジネス全体の成長とに貢献し、地域のパートナーに利益をもたらすことになるでしょう。