アジアでゲームをリリースする際の指針
"現在のゲーム産業について話す時、中国の話題は避けて通れません。
中国に加え、インドネシア、韓国、ベトナム、タイ、マレーシアなどのアジア諸国はコールオプションに関するの議論やビジネスインタビューに度々登場します。
EA等のAAA作品の巨匠からTeam17等のインディーズのスペシャリスト達まで、彼らにはこれらの市場が金鉱山の様に見えています。
特にPCやオンライン、モバイル空間で活動している人々の目には見逃せないチャンスとして映るでしょう。これらの市場に存在するゲーマーの数は無視できません。
しかし依然として、やる気に満ち溢れたゲームクリエイターにとってこれらの市場は恐ろしく、訳が分からず、複雑な世界のままです。この世界の難しさを知りたければ、Red Candle Gamesがリリースした『還願 DEVOTION』が参考になります。この作品は中国で侮辱的なものとみなされ、大炎上した後Steamストアから販売停止処分を受けました。
「言語、芸術様式、プレイヤーの行動...東と西は文化的に大きく異なります。特に規制。過去6ヶ月の間に中国で何が起きたか、もうお分かりでしょう。中国にはゲームを承認するための部門が3つあり、何が良くて駄目なのかを記した手引書はどこにもないのです。我々は今、難しい立場にあります。ゆえに現地の視点が必要になります。
新規市場に不確定要素はある程度は付き物です。ですが昨年のゲームの承認が凍結された一件によって、いかに物事が急転しうるかということがはっきりしました。
ではどうすればアジアで成功する確率を最大化できるのでしょうか?
質の悪い翻訳はすぐにわかりますし、何よりその国のゲーマーから反発されます。
アジア市場の中には特に扱いの難しい国もあり、同一の言語でありながら複数のバージョンが存在することも珍しくありません。
「様々な地域の翻訳者と協力し、人々の様々な言語の話し方、あるいは理解の仕方の面で異なる点を反映させる...そういったことすべてが中国のような国の場合、ことさら重要になるのです。」
現地の翻訳者を使うことが非常に重要です。その方が質の高い翻訳者を見つけやすくなります。
声優に関しても同じことがいえます。ほとんどの開発チームは字幕を使っていますが、競争が激化することもあってか、一部の開発チームでは作品にボイスを組み込むことが当たり前になっています。繰り返しますが、現地の演者が重要なのです。
「本当はあまり適していない演者を誤魔化しながら使っている開発チームはよく見受けられます。」Emeryはそう言います。「そしてアクセントがおかしいと指摘されるわけです。中国の代わりに台湾でやった時はわかりやすいですね。例えば。プロが吹き替えればすぐに気づかれます。吹き替えが映画に匹敵するレベルの時も気づかれます。成熟した市場では今、こういったことが起きています。
これらの市場をターゲットにしたローカライズは、単にテキスト翻訳し声優を雇えば良いというものではありません。時には、その文化では受け容れられないという理由でゲーム自体に調整を加えないといけないこともあります。
「誰が悪役か、悪い奴かという問題はありふれたものです。」Emeryはそう説明します。「ゲームが字幕付きだからといって、悪役が中国語のアクセントを扱えるわけではありません。地雷原みたいなものです。そして地雷がどこに埋まっているかはわかりません。」
Deslandesが付け加えます:「逆方向にローカライズすべき時もあります。つまり悪役のアクセントをアメリカ人かイギリス人のものにする。そうすれば現地の人々の感情を逆撫でせずに済みます。
死に関するテーマや死の表現を中国のような市場で表示しようとすると、大きな落とし穴にはまることがあります。何が問題になるかはわからないものです。」
現地の人々の好みに合わせるため、あるいは多種多様な国の決まり事や制限に対応するためのこれらの変更は、十分な時間が確保されていない時は頭痛の種になり得ます。
アジアでのリリース時に開発チームが提案された変更を完全に理解しておらず、その変更も最後の最後までほったらかしにされたままということも普通にあります。中国でゲームをリリースする場合は、ある程度余裕を確保しておき、急を要する変更や複雑な設計上の変更に時間通りに対応できるようにしましょう。その後きっちりテストすることも忘れずに。」
中国のような国のゲーマーはそれぞれ異なる好み、関心、休日、感性を持っています。商品をリリースする際はこれらを考慮しておくと有利に働きます。
「ゲームをリリースするタイミング等、現地文化に合わせた販売キャンペーンを行うのは良い考えです。」PTW International アジア支社社長 Winston Wongはそう語ります。
「一例として、アジアでは春節の前の時期にリリースされる海外のゲームは多くありませんまた、ローカライズ版のゲームと国際版のゲームを同時にリリースできる場合、この地域のゲーマーは喜びますし、リリース時にゲームを試す可能性が高まります。現地特有のキャラクターデザインやスキン等、もう一歩先を行くローカライズもまた、ゲームの成功に貢献します。
販売戦略、カルチャライズ、ローカライズの他に、収益化を考慮すること重要です。例えば、無料プレイ(F2P)の仕組みはアジア諸国では成功する傾向にあります。
記事の冒頭で、『還願 DEVOTION』が文化的に問題のある素材を含んでいたことをお話ししました。そしてこれこそローカライズ品質保証がアジア諸国における成功と失敗を分ける理由なのです。
「査読工程であるローカライズ品質保証を省略してはいけません」Emeryは訴えます。「すべてのテキスト、オーディオ、ビジュアルコンテンツをテストし、それらが正しく適切であること確認する。最終テストを行うことは大切です。」
Wongも同意します:「ローカライズテストは、翻訳済みのテキストがゲーム内のシナリオにフィットし、そのシナリオが検閲や文化的な問題を踏まえた上で正しく表現されることを確認するためには不可欠です。」
アジアでのリリースは(時には同じ国における)政治的、文化的、財政的、言語的な違いを考慮すると圧倒されそうになります。
アジア市場で利益を望む開発チームやパブリッシャーにとって最も重要なことは、良質で信頼できるローカライズ・サービスパートナーを見つけることです。
「確かな品質と実績があり、ゲームがリリースされる国にオフィスを持つローカライズパートナーと協力することが重要です」Wongは言います。「ゲームの語調がどうあるべきか、どうすればゲームをカルチャライズできるか一番よくわかっているのは現地の人々です。」
「加えて、アジアでは情報セキュリティや海賊版問題に対する様々な見方が数多く存在します。セキュリティ意識が高いパートナーと協力することで、リリース前のコンテンツ流出やコンテンツがコピーされる事態を未然に防ぐことができます。」
Emeryは続けます:「私にとっては、これは色んなことの組み合わせです。1つは現地の市場に通暁し、存在感を確立し、経験豊富である誰か。
もう1つはそれぞれの国内での包括的なサービスの提供。複雑な地域で複数のパートナーと協力する際の複雑さを軽減できるからです。」
パートナーはこれらのアジア市場についてはもちろん、ビジネスについても精通していることが求められます。
「ターゲット市場について熟知していることは大事です。しかし開発チームやパブリッシャーが何を望んでいるかを理解していることもまた重要です。」Deslandesはそう言います。「品質に関しては申し分のないパートナーが既にいるかもしれません。ですが彼らが欧米について十分理解しているとは限らないため、彼らとの協力は時に苦痛に感じられるでしょう。」
アジア市場でゲームをリリースする方法も含め、PTWのサービスの詳細に関しましては、ぜひお問い合わせください。