ローカライズ
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新興国におけるローカライズ戦略
ゲームをヒットさせるためには、いくつの言語が必要か?
ビデオゲーム市場は今や全世界に及んでいます。そのため、提供する言語が多ければ多いほどビジネスになる、ということは明白なように思えます。しかし、時間と資金を投資する価値のある新興市場を見極めるにはどうすれば良いでしょうか?また、提供する言語が決まったとして、その市場でのローカライズ戦略はどのように立てれば良いでしょう?
ビデオゲームの多くは、英語、日本語、そして近年は中国語から他言語へ翻訳されています。意外に思われるかもしれませんが、世界で最も広く話されている言語のランキングで、英語は3位に過ぎません。1位は中国語、2位はスペイン語で、4位がアラビア語、5位にヒンディー語・ウルドゥー語が続きます。ここにチャンスがあることは明らかですが、では果たしてこれらの市場ではどれくらいビデオゲームがプレイされているのでしょうか?
また一方で、スウェーデン、オランダ、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スロベニア、エストニア、ルクセンブルグ、ポーランドは、英語能力の指数が高い国ですが、これらの国の国民はゲームをするのでしょうか?
デュー・ディリジェンス
NewzooやPlayer Researchなどのリサーチサービスでは、ビデオゲーム市場の分析を行っています。こうしたサービスは、ビデオゲームをプレイする人口が急増している国のうち、ローカライズ戦略に最適なROIを提供すべき国を判断する際に役立ちます。潜在的な市場でどのようなゲームプラットフォームが人気なのか見てみましょう。すべての国でPCやコンソールゲームが普及しているわけではなく、多くの新しいゲーマーはスマートフォンからスタートしています。例えば、インドではコンソールゲーム機のコストが高いため、スマートフォンがゲームの主流となっています。
ゲーム人口が多様化している地域では、どのようなプラットフォームが人気を博しているのかを調べ、その歴史に基づいてローカライズ戦略を立てるとよいでしょう。ゲーマーはなぜプラットフォームを変えたのか?普及した要因は何だったのか?市場間の条件が似ていれば、そこに同様のビジネスチャンスを見出すことができるかもしれません。
また、新しい市場に進出する際には、ジャンルも重要なポイントになります。その地域ではどのようなゲームが好まれるのか。FPSが好きな地域であれば、RPGは根付かないかもしれません。
ターゲットとする市場の社会・経済的な多様性はどの程度か?これは、ビジネス拡大を期待できる地域を特定する際、非常に重要な情報となります。ゲームの価格設定も重要ですが、ローカライズ戦略においてさら重要なのは、「フリーミアム」や「マイクロ・トランザクション」モデルの台頭により、経済状況に左右されず、あらゆる人々がゲームに参加できるようになったということです。これは、より上質なゲーム体験への欲求を駆り立てるという利点もあり、ROIが高くなる傾向にあります。その市場での既存のゲームのダウンロード率や収益率を調査し、適合性を確認します。
最後に、競合他社はその新興市場で確かな地盤を築けているのかを調査します。他の企業が何をしたかを見て、その失敗や成功から学ぶことは悪いことではありません。部分的なローカライズではなく、完全な「翻訳」を行ったのか?また、ナレーションのローカライズではなくキャプションを採用したのか?このような洞察は、市場に浸透するためのローカライズ戦略を決定する上で重要な鍵となります。
細部への配慮
新しい市場への参入が決まったら、まずはその国の文化、つまり社会的規範やタブー、宗教的慣習などを徹底的に理解することが大切です。時には、対象となるゲームのストーリーが新しい市場の文化と大きく異なるために、ローカライズが大変なこともありますが、そのようなケースはほとんどありません。しかしながら、文化に関するミスを起こさないためにも、現地の専門家と連携を取ることができるローカライゼーション・プロバイダーと提携することが必要になります。
新興市場でのローカライズ戦略で重要なのは、現地政府と協力し、規定する法律を遵守しながら、ゲーム内でどのようなマネタイズが可能かを検討することです。中国のように、規制が厳しい国もあり、このような場合は戦略に大きな影響を与える可能性があります。リリース予定のタイトルには、アイテムを購入するためのゲーム内通貨は存在するのか?それとも広告を掲載するのか?後々の混乱を避けるためにも、事前に把握しておくことが重要です。
ゲームを市場に投入する前に、地元のインフルエンサーと協力した情報発信が可能かも検討します。TwitchやYouTubeなどのストリーミングサービスでは、ゲームプレイを視聴者にいち早く公開してくれるゲーマーがいます。これにより、公式なプロモーションが開始される前でも、ポジティブな口コミを広めることができます。ストリーマーは、企業の代弁者ではなく、本物のゲーマーの声だと考えられていることが多いので、彼らと提携することで、ソーシャル・エンゲージメントを高めることができます。
ゲームプラットフォームの中には、SteamのPCタイトル向けアーリーアクセスのように、リリース前の取り組みを行っているものがあります。これは、開発中のゲームをユーザーに体験してもらい、最終的なリリース形態を決定するためのフィードバックをチームに提供する機会です。しかし、その一方で、未完成の状態あるいは不具合が残っている状態で発売され、コミュニティから否定的な意見が寄せられることも少なくありません。このような問題が発生する前に、提供されるゲームの内容を明確に伝えることが重要です。
推奨事項
新興市場への参入は、さまざまな面でやりがいがありますが、慎重に検討する必要があります。まず始めに、ターゲットとなる市場を理解しておくこと。新興市場での活動をサポートしてくれる現地の専門家と協力すること。あらゆる場面で、潜在的なユーザーからのフィードバックを継続的に収集すること。以上を踏まえれば、単に販路を拡大するだけでなく、今後のリリースへの関心を高め、新興市場を潜在的な資金源へと発展させることができるでしょう。