ローカライズ
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ゲームをローカライズする前に聞いておくべき質問
ローカライズは、ゲームがプレイヤー数を増やし、売り上げを倍増させるためにできる大きな手段の1つです。
しかし、大きな投資には恐ろしいリスクも伴います。
なぜなら、表面だけ見ると、ローカライズは単純に切り取って置き換えるだけの作業に見えるからです。しかし実際には、翻訳者、校閲者、テスター、販売者、開発、あるいは地域の評価委員までもが協力し合う、複雑な工程です。そして、時には、ステークホルダーとシステムの複雑な絡み合いに悩まされます(特に初めてローカライズに携わる場合には)。ゲームの売り上げと成功がローカライズの効果にかかっている以上、その投資に価値があるのか知りたいのは当然のことと言えるでしょう。
そのため今回は、ローカライズに投資する前に聞いておくべき質問(とその答え)についてご紹介します。
早速見てみましょう。
ローカライズについての記事を書くことができるのが嬉しく、ついつい内容が膨れ上がってしまいました。
そのため、下記のように内容を整理してみました。各項目は独立しているため、記事全体を隅から隅までお読みいただく必要はありません(でも読んでいただけたら嬉しいです)。
一言で言うと、ローカライズとは、ゲームを新しい国や地域でリリースするための準備のことです。一見、単なる翻訳作業のように思われますが、詳しく見てみると、翻訳の他にもさまざまな作業が求められることがわかります:
簡単に言うと、翻訳は、ローカライズという大きなプロセスの中に含まれるほんの一部にすぎません。ゲームを他の言語に書き換える作業のことを翻訳と言います。
ローカライズのプロセスには必要不可欠な要素がいくつもあり、そのどれもが翻訳を成功させるために極めて重要です。ローカライズのプロセスはこんな感じです:
ゲームの規模と求めるローカライズの品質によって変わります。非常にざっくりですが、下記のルールだけでも覚えておいてください:
ゲームに含まれるワード数が多く、翻訳したい言語が多いほど、翻訳にかかる期間も長くなります。
*また、ローカライズ作業の進行中に変更が加わると、追加の作業期間が必要になる点についても考慮してください。
“All your base are belong to us”というフレーズをご存知でしょうか?(知らない場合ぜひ検索してみてください。)これは翻訳で大失敗した一例です。でも低品質なローカライズはさらに悲惨なものになります。文化的レファレンスを間違えるとその市場全体の気分を害することになるかもしれません。それどころか、準拠規格に違反すると目標とする市場でゲームを販売することができなくなる可能性すらあります。劣悪なローカライズは金銭的な面でも評価の面でも有害です。
ローカライズは良質なユーザーをさらに獲得するのに役立ちます。良質なユーザーを獲得すればするほど、ゲームの知名度が上がり、人気も上昇し、売り上げも上がります。ゲームを最大限成功させたいなら、ゲームをローカライズするべきです。
主要なゲーム市場にゲームを売り出すにあたって、ローカライズチームはよくEFIGS(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語)とCJK(中国語、日本語、韓国語)を対象にします。こうしたグループは参考になりますが、目標にする市場はゲームの性質やゲームが対象にするユーザーによって変わってきます。
市場の開拓はどんなゲームでも難しい問題で、特に言語が違うと大変です。特定の市場でリリースされた類似のゲームから得られた既存のデータを参照すれば、どのジャンル、どの形式が特定の国で人気を得られるかがわかります。市場を開拓する際にまず考えてみるべきことを挙げていきます:
どちらがいいかはゲームの種類によります。ゲームがストーリーのないオンラインのFPSなら、ゲームの音声を翻訳する必要はそれほどありません。でもゲームがストーリー重視のRPGでセリフが重要な要素を占め、音声翻訳がユーザーのゲーム体験を向上させるなら時間とお金を投資する価値があります。
ローカライズで対象にする言語や地域を既に絞り込んでいるなら、ローカライズを同時に行うのは良い方法です。
6つの言語全てで同一のプロバイダを使うと、同じ情報源と参考資料を使って作業するので、6つの言語で統一感のある翻訳が生み出されます。その上、1つの言語でバグやエラー、疑問点が見つかった場合、チーム同士で相談し合ってどの翻訳でもカバーされるようにすることができます。
さらに、プロバイダが1つだと全ての言語で変更を加えられるので、後々発表されるパッチやアップデート、DLCの公開がとても容易になります。
はい、その通りです。理想的なローカライズチームとは、ゲームが大好きで、ゲームの中で言語がどんな役割を担っているかを理解しているなメンバーの集まりである必要があります。ゲームをした分だけ良いゲーム体験がどんなものか理解が深まり、その分ローカライズするゲームをより良いものに仕上げられます。
ローカライズの費用は品質や速さ、ゲームのボリュームなど様々な要素によって変わってきます。ただ一般的に、翻訳が手間のかかるものであればそれだけ費用も高額になります。ローカライズのプロセスにおけるお金の流れを紹介します:
ファミリアライゼーション:時間単価
用語集の作成:時間単価
翻訳: ワード単価(数字やプレースホルダも1ワードとして数えられます。同じフレーズが繰り返し登場する場合は、繰り返し箇所の単価は低くなります。)
校閲: ワード単価
テストプランの作成:時間単価(あらかじめ検討したプランがある場合は安くなることがあります)
ローカライズのQA:時間単価
プロジェクト管理:時間単価
ローカライズから得られる価値を決定づけるのはゲームのジャンルとユーザーです。ここでは、いくつかの言語を例に、それらのコスト、範囲をざっくり説明いたしましょう。
簡体字中国語 は比較的安価であり、巨大な市場を開拓できる可能性があります。
フランス語 はフランスだけでなく、カナダや他の旧フランス植民地でも話されています。また、コンソールのゲームをリリースする際は、フランスではNintendo Switchが大変人気であることを念頭に置いた方が良いでしょう。
ロシアの英語レベルは比較的低いため、ロシアで利益を得ようとする場合はロシア語を選ぶ必要があります。運の良いことに、英語からロシア語へのローカライズは大抵安価で済みます。
スペイン語 は世界でもっとも話者の多い5つの言語の1つであり、かなりの収益が見込めます。
あまり多くの変更をしないことです。ローカライズのプロセスが開始した後では、ちょっとした変更でさえコストがかさむ原因になります。
仮にあるゲームを5つの言語に翻訳しているとしましょう。そのゲームにはプロット全体に関わる重要な武器があります。そして武器に相応しい名前を100回思いつきました。武器名を変えるだけでこうなります:
100ヶ所の変更×5つの言語=翻訳が必要な500ワード
検索と置換機能を使えばいいと思うかもしれませんが、言語によっては語尾が複雑で、名詞1つ変更すると文全体に影響があるものもあるのです。(例えばポーランド語。1つの名詞につき14つの接尾辞があり、それらは形容詞に影響します。そして形容詞も同様に14つの接尾辞を持ちます。)つまり武器の名前を1つずつ手作業で置き換えなければいけません。それに何より、新規の名前は文の他の部分の構造に影響するため、ストリング全体を見直す必要が出てきます。1つのストリングは平均的に10ワードで構成されています。
つまり100ヶ所の変更×10ワード/ストリング×5つの言語=5000ヶ所の変更となります
ワード単価で料金が計算されている場合、あっという間に費用が膨れ上がります。
一般的にフリーランスは価格が安い傾向にありますが、ローカライズ代理店はローカライズ品質保証等の幅広い言語やサービスに対応しています。大手プロバイダを利用する最大の利点としては、あらゆる言語に一括で対応できるため、プロジェクト管理の負担を軽減できることが挙げられます。
Google翻訳のようなツールは他の言語でコーヒーを注文するなどのちょっとしたやり取りにはとても役立ちますが、ニュアンスや文脈というゲームのセリフやストーリーの翻訳に絶対欠かせない2要素の理解にはあまり役立ちません。人間の手による翻訳に代わるものはまだありませんが、そのプロセスを遥かに容易にするツールは存在します。
有能なローカライズのプロならば、日常的に使用しているツールの名前をスラスラと挙げられるでしょう。どんなローカライズチームも使っているツールを少しばかり紹介します。
コンピューター支援翻訳を利用すればゲームスクリプトの膨大な量の文章が扱いやすくなります。良質なCATツールはタグやプレースホルダを変更できないようにできるので、何かの拍子に変更されるようなことがなくなります。適切な翻訳管理ツールを使えばローカライズのスピードが向上します。
ゲームスクリプトの中の単語が1つ変更になったと考えてみてください。文章全体を再度翻訳する代わりに、変更管理ツールが元の言語での変更箇所を特定し、その個所を示し、翻訳された言語でフィルターをかければ翻訳スピードが向上します。
用語集(タームベースとも呼ばれます)には、用語、固有名詞、地名など、翻訳の工程で統一しなければならない重要な情報が保存されます。用語集によって翻訳へのアプローチが均質になり、新しい単語や創作された単語(特にストーリーに重点を置いたゲームでは豊富に現れます)を規則的に処理することが可能になります。
このツールは同一の文脈中の同一の語句の並びを検知し、過去の翻訳を表示します。これにより大幅に時間と費用の削減ができます。
ローカライズの工程を通じてゲームのトーンを一定に保つにはファミリアライゼーションが最適です。ファミリアライゼーションとは、まず初めに翻訳チームがゲームについての鍵となる情報(トーンや文化的要素)について調べ、用語集とスタイルガイドを作成することで、翻訳チームの全員がプロジェクトを通じて一貫性を保てるようにする作業のことです。
いつも最高品質の翻訳を得られるという保証はありません。しかし依頼する前に確認するべきことはいくつかあります:
カルチャライゼーションとは通常の翻訳を越えて、コンテンツを他文化や他の地域に適応させる作業です。カルチャライゼーションでは言語を変更するだけでなく、コンテンツのある部分が特定のマーケットで不適切ではないかについても考慮します。
例えばキャラクターの描写、歴史、宗教、シンボル、ジェスチャー、ボディーランゲージ、配色など、言語以外の全ての要素を含みます。
本来は全年齢向けのタイトルが18+レーティングを受けると大きな損失となります。ターゲット層が完全に代わり、潜在的な顧客の購買意欲が失われてしまいます。カルチャライゼーションではゲーム内の文化的に不適切な部分を変更し、特定の地域の文化、社会、法を逸脱しないようにします。
LQAとは、ゲームと質の悪い翻訳の間に位置する最終防衛ラインのようなものです。LQAは2つの面であなたを守ります:
LQAの基準を分析する最も良い方法は、サブミッション率を見ることです。サブミッションとは、ハードウェア製造者がゲームを承認する前に確認しなければならない牽制機構を指します。例として、コントローラーが接続されていないことを示すメッセージは適切なタイミングで適切な用語を表示する必要があります。サブミッション率が95-100%の間に収まっていれば、安心してよいでしょう。
出来るだけ早く。リリースが予定される地域を把握した状態で開発を開始すれば、後に発生しうる技術的問題の多くを防止できます。最初からローカライズを検討していれば、名詞の性、特殊文字、ノーブレークスペース等の言語や文化特有の問題を回避することできます。
早期にローカライズを検討することで、プロジェクトを予定通りに完了させることができます。開発終了時に低品質の作品を強引にリリースせずに済むのです。
翻訳コストをカットするためにすべきこと、それはコンテンツの一貫性を保つことです。例えば、同じ意味の異なるストリングを3つ書き、それらを似たような文脈で使ったとします。
ストリング 1: わたしはロンドンからきました。
ストリング 2: 私はロンドンからきました。
ストリング 3: わたしはロンドンからきました(句点がなくなるだけでも異なるフレーズとして扱われます。)
コンピューター支援翻訳ツールは、これを3つの異なるフレーズとして認識します。しかし実際は1つです。従ってフレーズを一度翻訳する代わりに、これらのフレーズは3つの異なるフレーズとして記憶されます。
大したことには聞こえないかもしれませんが、こう考えてみてください:
ストリング1 + ストリング2 + ストリング3 = 10ワード
10ワード x 10円(1ワードあたりの一般的な翻訳単価)= 100円(上記の小さな違いによって生じたコスト)
今度はそれに例えばプロジェクトの一致しない1000ヶ所を掛けます。するとコストが増加します。
ですがもしこれらのフレーズが全て同一であれば、計算結果はまったく違ったものになります。10ワードの代わりに、CATツールは4つのみを認識するでしょう。繰り返されるストリングのコストは完全新規の翻訳より安価なため、どんな変更であってもコストは軽減されます。
また、賢くコーディングすることでコストをカットすることもできます。常に同一のストリングを使用している場合、それをコード化することで、ゲームの他の部分にも流用することができます。
最後に、テキストのハードコード化は避けてください。これはとても、とても、とても重要です。テキストがハードコード化されている場合、それを翻訳者に送る際、かなりの時間と労力が必要になります。
王道はスプレッドシートです。 適切にフォーマットされたスプレッドシートがあれば、翻訳ソフトに素早く簡単にインポートできます。
最適なのは多言語対応のフォーマットです。たとえば、.xliffファイルなどがあります。これは翻訳のためにデザインされたファイルで、コンテキスト情報なども含めることができます。
しかし、やはりまだスプレッドシートが使われることが多いです。その場合は、スプレッドシート(および、そのタブ)が同じテンプレートやフォーマットを用いていることが重要となります。
ポイント:ストリングをアルファベット順にしないこと
コンテキスト情報はあればあるほど望ましいです。ローカライズチームが実際にプレイできるフルバージョンのゲームがあれば、ぜひご提供ください。ない場合は、ゲームのトーンやスタイル、背景情報を提供することで、より優れたローカライズ品質につながります。
ゲームをローカライズする前に知っておくべき事項についてご紹介しました。
最後に
もう1つだけ
質問があります:
我々はローカライズのエキスパートです。20年以上もの間、40以上もの言語のローカライズを手掛けてきました。 40+ languages.
さまざまなことを経験してきています。
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