ゲームデバッグ
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テストラボの内側:ゲームのための大規模なQAチームの構築と管理|Rajdeep Sahani
ゲームはますます高度化を続けており、その規模と複雑さも増すばかりです。ですから、高機能なQAチームを設置することが極めて重要です。
品質保証(QA)は、プレイヤーの期待と総合的な満足度を満たす高品質なゲーム体験を提供する上で、必要不可欠な役割を果たします。
しかし、お客様のゲームに適したQAチームを構築し管理するには、入念な計画と協力、そしてハイレベルな組織化が必要です。
そこで、お客様のニーズに適したQAモデルを選択するための洞察と、大規模なQAチームを管理して、お客様のゲームが最高水準を満たすようにするための戦略についてご説明します。
大規模なテストのためにQAチームを構築する場合には、ゲームの要件を明確に理解することが重要です。こうした要件は、ゲームの規模、ターゲット市場、カバー要件、サポート予算によって異なります。
PTWでは、通常3つのQAチームモデルを構築しており、お客様のニーズに応じてカスタマイズできます。
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例:
インド(バンガロールスタジオ)にある私たちのQAチームは、ヨーロッパに拠点を置くクライアントのあらゆるQAニーズに対応します。2010年、私たちは小規模なプロジェクトに取り組む小規模なチームからスタートし、徐々に170名のフルタイムリソースを擁するチームへと成長しました。そして、各タイトルの継続的なサポートを提供しています。今日、一連のプロジェクトに携わるQAチームには、セキュリティ対策を確実に維持するために、専用のワークスペースが設けられています。
この取り組みは、ヨーロッパとインドのシフト時間が重なっているために特にうまく機能し、QA、デベロッパー、生産チームの協力体制が向上しています。
(なぜシフト時間が大きな違いを生むのかについては、 「品質保証におけるタイムゾーン内ソリューションの威力」 をお読みください)
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例:
当社には、このタイプの契約を行っているクライアントが数社あります。こうしたクライアントは、ゲームをフルカバーするために、さまざまなシフトでのサポートを必要としていました。
各ゲームスタジオは、QAカバー範囲のニーズに基づいてカスタマイズされた要件を持っています。ある例では、デベロッパーが米国のシフト時間内で作業し、コアチームがシフトに合わせて作業し、他のチームが延長時間内にサポートを提供する、という状態を希望しました。他のスタジオの例では、デベロッパーは複数の地域で作業をし、各製品のコアチームはさまざまなシフトで働く必要がありました。
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例:
PTWは、非常に人気の高いゲームをいくつもリリースしているゲームスタジオと連携しており、複数の地域にQAチームを置く必要がありました。QAサポートはブカレストと上海で始まり、モントリオール、台北、東京に拡大しました。現在、チームは5つの異なるスタジオの6タイトルをサポートしており、チーム全体のリソースは148人です。
品質保証におけるお客様のニーズに最適なモデルを選択したら、次はパフォーマンスを最適化するための戦略を設計します。
どのモデルを選択するにせよ、適切な戦略の実装が重要です。これによりチームのスピードを維持しながら、 開発パイプライン全体にわたって徹底した品質保証を提供できます。
効果的なアプローチをいくつかご紹介しましょう:
活発なコミュニケーション
コミュニケーションチャネルを確立し、毎日のスクラム会議(短時間で要点をまとめる会議)をスケジュールし、定期的に最新情報を共有することで、緊急のQAニーズを評価し、プロジェクトの進捗状況を伝え、協力とパフォーマンスを強化できます。
クロストレーニングの確保
クロストレーニングにより、学習曲線が抑制され、チームメンバーがより幅広いスキルセットを開発できるようになります。これにより、プロジェクト関連のタスクをより多く処理できるようになります。
効果的なリソースプラン
• テストリードが熟練したリソースプランニングのスキルを持つようにするために、プロジェクトマネージャーとQAマネージャーは、テスト中に監督と指導を行えます。
• これには、プロジェクトのタイムラインの監視、最適なリソース割り当て、ピーク時のリソースの再配分、提出時およびピーク時のカバーの確保、また、作業量が少ない時期に、リソースが最新のQAトレンドとツールについての訓練を受けることなどを含みます。
訓練されたリソースのプール管理
訓練を受けたテスターを効果的に管理することで、研修の時間を最小限に抑え、即座に支援が必要なプロジェクトをサポートできます。
継続的な改善
この種の業務に終わりはありません。そのため、各業務から学んだ教訓に基づいてプロセスを評価し、改良することが重要です。改善する領域を特定し、改良を実施し、その結果を監視することで、より効率的に将来の課題を軽減できます。
プレイヤー体験とプロジェクト全体の成功には、製品のリリースの先まで品質の提供が欠かせません。チーム規模を拡大しながら品質基準を維持するには、手順の整備が重要です。
「成功」とは達成するものではなく、むしろ継続的な改善のプロセスであると言えるでしょう。あるプロジェクトではうまくいっても、他のプロジェクトではうまくいかないこともあります。ですから、それぞれの新しい仕事を、まったくの白紙として扱う必要があります。しかし、プロジェクトや要件によって一部の戦略が違ってくるとしても、中核となるベストプラクティスは変わらない、ということもまた事実です。
プロジェクトを確実に成功させる重要な鍵は、チームの組織力と適応力です。効率的なコミュニケーション、組織化の維持、スムーズなオペレーションのためには、強力なチームヒエラルキーが欠かせません。
複数のプロジェクトを管理する場合、業務の負荷によってチームのバランスを取り、各プロジェクトが適切なシニアサポートを確保できるようにしたいものです。これは、重要プロジェクトや期限が間近のプロジェクトに、上級リソースを割り当てることを意味します。
複数のプロジェクトのバランスを取るためにもうひとつ重要なのは、従業員の健康と満足度です。柔軟なチームとシフトスケジュールによって、従業員の燃え尽き症候群を緩和し、より高いレベルの生産性を促進します。
最後に、プロジェクトとチーム双方の健全性と生産性を維持するために、パートナーとの定期的なレビュー をあらかじめ決められた間隔で行うことが有効です。
現時点では、究極の堅固なQAチームの構築には課題があるということは、周知の事実です。QAプロセスを拡張する際に起こる可能性のある問題をいくつかご紹介します:
ここで、大規模なチームの開発や複数プロジェクトの同時に管理する際に直面した、プロセスやプロジェクト特有の課題を紹介します。
課題 : クライアントが提示した生産性に関する主な懸念事項の1つに、QAリソースが、作業する対象のゲームシリーズやテストツールにどれだけ精通しているかという点がありました。
アプローチ : この課題に対処するため、テスターがプロジェクトに配属される前に、クライアント別に特化した訓練プログラムを実施しました。この訓練は、各プロジェクトのサブジェクトマターエキスパート(SME)によって実施され、使用するタイトルやツールのあらゆる側面をカバーしました。訓練後、各候補者は評価を受けます。そして、評価をクリアした候補者のみがクライアントのプロジェクトに配属されました。
影響 : このアプローチにより、プロジェクトに配属されるQAメンバーの質が大幅に向上し、シニアメンバーが常に監視する必要がなくなりました。さらに、テスト対象タイトルの学習曲線が効果的に短縮され、配属されたテスターの学習曲線はゼロになりました。
課題 : COVID-19が大流行する中、ある主要クライアントからQAチームの拡充の要請を受けました。オフィスで作業していたときであれば、こういった要請に応えることはよくあることでした。しかし、このような状況においては特有の課題がありました。リモートワークのため、人事チームもQAチームも、テスターを採用するのが難しくなっていたのです。しかし、もっと大きな課題は、こうしたテスターにオンライン訓練を実施することでした。なぜなら、上級リソースの監督下で訓練を実施する方が簡単だからです。
アプローチ : プロジェクトマネージャーとテストリーダーは、人事チームと協力して候補者のオンラインスクリーニングを実施しました。最終選考に残った候補者は、テストリーダーとシニアテスターの指導下に置かれました。チームの主な課題は、新人を適切に訓練することだと認識し、包括的訓練を提供して、シームレスな研修プロセスを確保するためにシフトを延長しました。
影響 : クライアントからは、チームの迅速な納期と生産性に、満足する声が寄せられました。新しく採用されたテスターは、そのクライアントの主要プロジェクトに欠かせないメンバーとして活躍しています。さらに、この成功により、同様の依頼をより短期間で効率的に処理する方法を学べました。
QAチームの構築と管理は、プレイヤーの満足につながる洗練された製品を提供するために不可欠なものです。しかし、最適な解決策を見つけるには、ゲームごとに異なるさまざまな課題が伴います。
重要なのは、ゲームに適したモデルを選び、協力と組織化を促進する戦略を実行することです。適切なシステムを導入することで、チームは自立し、適応力を維持し、信頼できる質の高いサービスを提供できるようになります。
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