ゲームデバッグ
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製造業から学ぶゲームQAのレベルアップ
多くの人にとって、品質と素晴らしさは同義です。それはつまり、その製品やサービスが最高の消費者体験を保証するために高い基準の下で考案されたことを意味します。
同時に、品質といえば製造現場や物理的・化学的試験、国際規格(ISO規格やOSHA規格など)、規制機関(FDA認証など)を連想する人も多いでしょう。しかし、さまざまな製品やサービスをよく見てみると、品質の重要性は業種を問わず広く浸透しており、適切な手段を講じなければ、製品や企業全体を左右しかねないことがわかります。
ビデオゲーム開発においても、品質保証を中核プロセスとして考慮することが重要なのです。そのために、リスク管理の重要性やエンドユーザーに対する理解、ライフサイクル管理など、製造業で用いられるQA手法からゲームチームがどのように学び、最終的にプレイヤーへ最高の体験を提供できるかについて掘り下げていきます。
リスクという言葉は、ゲーム内であまり使われません。なぜならネガティブな結果を連想するからです。しかし、リスク管理に関するISO31000:2018規格によると、リスクはポジティブな結果をもたらすこともあるため、進んで対応すべきです。リスクを適切に管理するには、次のような利点があります:
(出典:ICH-Q8規格 - 医薬品開発)
上記のような医薬品の一部原則をゲーム業界に応用し、リスクに基づくアプローチを用いた効果的な製品開発の重要な要素は以下のとおりです:
QAで導入および提案する変更によってエンドユーザーの体験をどのように向上させられるか、常に自問しなければなりません。ゲームがオープンワールドであろうとその他のジャンルであろうと、ライブサービスであろうと買い切り型であろうと、マルチプレイヤーであろうとシングルプレイヤーであろうと、また新規IPであろうと既存IPであろうと同じです。これは機能的なQAテストだけでなく、特にローカライズの品質保証の文脈にも当てはまります。検討すべき問いとして、以下が挙げられます:
QA中にフラグが立てられた変更関連の起こり得る結果(プラスかマイナスかにかかわらず)を特定すれば、体系的な方法で分析を始められます。FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード影響解析)、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、RRF(Risk Ranting and Filtering:リスクの洗い出しとフィルタリング)のようなさまざまな定性的・定量的手法を用いることで、ゲームのライフサイクル全体を完全にマッピングでき、結果として開発プロセス全体のフレームワークを構築できます。このような技術は、次のような面で役立ちます:
(出典:ICH-Q9規格:品質リスク管理)
ただし、たとえリスクに基づくアプローチがプロセスの整理と改善に役立つとしても、リスク自体を消し去ることは不可能です。リスクは常に存在するものであり、ゲーム開発プロセスの一部として受け入れなければならないのです。さらに、リスクに基づくアプローチを法的要件の回避に用いることはできないため、チームは常にコンプライアンスと地域の規制を意識する必要があります。
すべての段階においてQAが留意すべきもう一つの重要な側面は、顧客や消費者の要望を理解することです。例えば、最近スーパーで買った商品を思い出してみてください。多くのブランドの中からそのブランドを選んだのは、特徴的な要素に惹かれたからではないでしょうか。最終消費者である私たちが、特定のブランドを選択する際に意識する属性はすべて、「品質にとって重要」であると考えられており、製造部門やサービス・プロバイダーはそれらの重要な要素を活かして製品を設計しています。例:
要約すると、要求事項を保証するためのプロセスやステップ、または段階に最終消費者の声を反映できれば、それに従うことに労力とリソースを集中させられます。ユーザー(私たちの場合はプレイヤー)が何を期待しているのか、どうすればその要望に応えられるのかを常に考慮することが重要です。
ギャップを特定した場合は、最優先で対処しましょう。上記のようなシナリオをビデオゲーム業界に当てはめると、ギャップや考慮すべき点の例として、以下が挙げられます:
現代ではあらゆる製品が特定のライフサイクルの管理を念頭に置いて設計されています。ライフサイクルとはエンドユーザーである私たちが製品を受け取ってから、その製品やサービスが機能しなくなるまでの一連の過程です。簡単な例を挙げると、シリアルを食べ終え、箱と袋はリサイクルボックスに入れ、もう一度資源に戻すことも一種のライフサイクルと言えます。
これはゲームでも同じことが言えます。例えばオンラインサーバーを必要とするタイトルがあったとしましょう。もしそのサーバーを廃止すると決めた場合、どのような影響があるでしょうか?またプレイヤーがこの製品に関わり続けるには、さらなるサポートが必要でしょうか?さらに、ゲームの保存がライフサイクルの一部であり、デジタル文化のユビキタス化が進んでいることを考えると、プレイヤーが製品にデジタルでアクセスし続けられるようにするにはどうすればよいのでしょうか?
ライフサイクルを効果的に管理することで、デベロッパーはゲームを成功に導くだけでなく、長期にわたって維持・改善し、プレイヤーに永続的で楽しい体験を提供できます。
品質とは、ひとつの段階や部門を超えたものです。新しい製品やサービスを市場に送り出すには一致団結する必要があり、品質と成功の責任は企業とその中核となる開発パートナーの間で共有されなければなりません。
ゲーマーの皆さんは、購入するビデオゲームに最高のものを求めているのですから、手を抜くことは許されません。リスクに基づくアプローチを重視し、エンドユーザーの視点から重要な品質属性を理解するとともに、効果的なライフサイクル管理を実施することで、ゲームスタジオはQAプロセスだけでなく、発売後の成果も大幅に改善可能です。QAへの十分な投資は、最終的にはプレイヤーベースへの投資であり、今後何年にもわたってロイヤリティを維持できる可能性を高めます。