ゲームデバッグ
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VRは、インタラクティブ・エンタテインメントを真の没入体験へと変化させました。そしてこの没入できる要素(ある世界から別の世界への迫力満点でわくわくする逃避)が、QAテストのスペシャリストにとってのゲームを永遠に変化させたのです。
VRテスターとゲーム開発者の双方に役立つ高性能のテスト環境の構築においては、テスターが克服すべき身体的な課題があります。また、バーチャルリアリティが進化を続けるなら、テスト環境も進化する必要があります。
VRテストの実際の課題を、より詳しく見てみることにしましょう。
VRテスター向け 課題
2016年よりVRは、メインストリームへと大胆に進出しました。しかしVRのハードウェア、ソフトウェアやコンテンツ開発に携わる人にとっては、この革命ははるか以前に始まっています。
VR表現に取り組むテクノロジーやコンテンツ企業が増える中で、高度に開発された機能や位置を備えたVRの品質保証のニーズは、着実に高まり続けています。機能面での品質保証テスターは、最新の技術の採用における専門家で、最新のイノベーションにスキルや体験を応用してきました。VRの導入によりゲームのテストチームには、ユニークかつ困難な課題が突きつけられています。
効果的なプランニング、リスク査定そして適切なテスト環境の創設こそが、VRテストに固有の困難に対処し、テスターの安全性を保護するうえで欠かせないことが明らかになりました。VRの身体的課題は幅広く伝えられており、開発者はその克服に向けて作業を続けています。これら課題の中にはハードウェアの問題、ソフトウェアの問題そして個人ユーザーの身体的感受性が含まれます。
テスターにとっては、VRの使用時間が長いほど、疲労度が高くなります。
VRゲームとハードウェアは、テスターが長時間プレイできるようにデザインされているわけではありません。さらに、ゲームやソフトウェアの初期段階のテストであるため、バグ自体が身体的に悪影響を及ぼす可能性があります。これは、使用されているハードウェアについても言えます。頭に取り付けられたディスプレイの初期バージョンは、初期プロトタイプからそれほど進化しておらず、快適性やユーザー体験の向上に向けたデザインの洗練プロセスは未だ行われていません。
早期発見、洞察と知識
D不快感、計測エラーそして潜在的なハードウェア上の問題の追跡が、VRにより高まっています。これら課題は、VRの品質管理に特有の早期発見を明らかにし、専門家の洞察や知識という貴重な集積の構築に一役買っています。各条件、そしてVRテストへの影響について詳しく見ていくことにしましょう。
サイバー酔いの現実
サイバー酔いは、体の視覚系が動きを知覚するものの、前庭系が動きを知覚しない場合に起こります(前庭系は運動、平衡および空間上の方向に関する感覚情報を提供します)。 その結果、自律神経系にミスマッチが発生します。
VRでは、感覚は運動の幻覚とともに伝えられ、ユーザーが動く場合でも運動は実際に目にしているものと必ずしも連動するわけではありません。ビジュアルコンテンツがリアルであればあるほど、ミスマッチの可能性が高まり、サイバー酔いを体験するリスクも高まるのです。
さらに、バグの中には視覚と運動との間に明らかなミスマッチを生み出すものもあります。例えば、プレイヤーが前方を見ており、アバターが停止している一方、表示される視覚的刺激は移動する風景のものであり、明らかなミスマッチが発生します。より高い場所からの視界も、オプティカルフローの変化や動きを通じたサイバー酔いの増大と関連しています。このもう一つの側面としては、高い場所からの視界が、没入度と正の関連を持っているということです。(出典)
プレイヤーの属性がサイバー酔いの感度に影響するかどうかに関する研究は、数多く存在します。これらには、人種、年齢、自然体における自然な体の傾き(バランスを修正するのに必要な生体力学的行動の度合い)、閃光融合の頻度しきい値(断続的な光の刺激が平均的な観察者に定常的な光と見えるようになる度合い)、そしてジェンダーが含まれます。(出典)
特定の属性者がVRの利用をすべきではないと論じる最終的な結論はないため、依然として個人ベースで考慮を行う必要があります。しかしながら、新たに登場する研究成果に注目し続けることも大切です。
VRに関しては、「シミュレーター酔い」という表現が使われることもあります。シミュレーター酔いとサイバー酔いは両方とも乗り物酔いの一種ですが、同一ではありません。(出典)シミュレーター酔いでは、サイバー酔いと異なる順番で症状を体験することになります。サイバー酔いの重症度は、シミュレーター酔いよりも約3倍であると考えられていることに注意することも重要です。
では、サイバー酔いとは正確には何でしょうか?重症度は人によって異なりますが、サイバー酔いの症状には以下のものが含まれます。
両眼転導―目の遠近調節上の問題
VSのユーザーは、両眼転導や調整の問題により目に痛みや不快感を訴える場合があります。VRへの毎日長時間プレイするテスターは、このリスクがさらに高まります。
両眼転導や調整の問題を理解するカギは、目の焦点について考えることです。私たちの目は、空間の一点に焦点を合わせ収束することで機能しています。この距離は両目で同じであり、脳はこの反応を、両眼転導と調整の組み合わせとして知られるものに組み合わせます。VRにより、焦点と両眼転導の点がズレます。目はディスプレイのスクリーンの焦点を合わせる一方、両眼転導の距離はVR環境のものになります。この結果、脳は自然な結合本能に反して動く必要があり、これにより眼精疲労が発生する可能性があります。(出典)
PTWは、目の不快感が、VRテストの症状に関する苦情のうち最も多いことを把握しております。
発作と調整
VRが発作の可能性を高めるという懸念があります。これは、プレイしているゲームのデザインや、使用されているソフトウェアにより異なる可能性があります - さらなる研究が必要な可能性もありますが。
オキュラス・リフトの健康および安全性のマニュアルでは、VRユーザー約4000名あたり1名が、症歴がなくても深刻な目まい、発作、てんかんあるいは意識喪失を経験する可能性があると警告しています。また、長期的な使用により手と目の調整、均衡や複数業務の処理能力に悪影響を与える可能性があることも警告しています。(出典)
上半身の痛み
VRにはさまざまなハードウェアが含まれる可能性があり、そのうち多くは頭部搭載ディスプレイ(HMD)のように一般的に用いられています。HMDはさまざまなデザインやサイズで提供され、市場には多様なスタイルやデザインが存在します。HMDの重量がユーザーに影響を与え、HMDが重ければそれだけ短時間で不快感を生む可能性が高まります。プレイの際に行われる運動が、HMDや入力装置の使用と組み合わされると、首や背中、そして腕や頭に痛みが発生する可能性があります。この種の反復性ストレス障害は、テスト環境のように通常使用が反復されると悪化します。
HMDのデザインは多様ですが、ヘッドストラップの位置と眼鏡のフレームの圧力により鼻と頭に不快感を生じさせる可能性があるため、HMDの中には眼鏡使用者が困難を訴える場合があります。
VR特有のバグ
バグ全体のうち3~5%が、VRゲームやVR体験に特有のもので、前述した身体的条件全てをさらに悪化させる可能性があります。これらは、2D環境でうまく機能する開発上の選択でも、VRでは特有の身体的課題を引き起こす可能性があります。
例として、プレイヤーがトリガーを引いていないのにゲームの動きが起きる場合のような特別のゲーム機能により、サイバー酔いのリスクが増大します。これには、プレイヤーのカメラを用いた予想外のカットシーン、あるいは音声や視覚のヒントなしである地点から別の地点にプレイヤーを飛ばしたり転送したりなど、ゲーム上で速すぎる動きがある場合が含まれます。これにより特定の面への方向づけに変化が起き、方向感覚の大幅な喪失が引き起こされる可能性があります。
別の例としては、スピードアップに別の手法を使うゲームが含まれます。これにより視覚領域が間違って移動する可能性があります。プレイヤーが制御できないことから焦点がなく、その結果極端な方向感覚の喪失のリスクが生まれます。
ゲーム内のビジュアル効果、特に高度な情報処理性能を要するものにより、フレームレートが遅くなり、ビジュアル面の‘どもり’や気晴らしが起きる可能性があります。これによりVR没入体験が中断しますが、これはフレームレートのわずかな下落によっても起きる可能性があります。同様に、いかなる待ち時間によっても方向感覚の喪失や中断が起きる可能性があります。ゲーム内の輝くフラッシュは頭部搭載ディスプレイにより大幅に拡大し、頭痛や目の痛みとなることがあります。
ユーザーインターフェイス(UI)は常にプレイヤーが快適に到達可能な場所にあり、努力したり不快な形でねじったりする必要がないようにしなければなりません。プレイヤーの周辺視野上に配置されるか、ゲーム内のオブジェクトによりわかりにくくなるUIは、定期的にアクセスされる場合に緊張を生む場合があります。
リスク管理
新しいソフトウェアあるいは装置をテストする前に、評判が確立しているテスト組織は手続きを導入し、さまざまな職場アセスメントを実施します。
しかし、バーチャルリアリティがテスターに大幅なリスクを生みことから、安定したスクリーニング、計画および準備プロセスを導入し、それを遵守しなければなりません。
VR上で業務するテスターを割り当てる場合、病歴を考慮することが欠かせません。これは、副作用を引き起こす可能性が高い体質や条件があるためです。しかし、この条件によって必ずしもVRテストの実施が妨げられるわけではないことを知ることが大切です。全ての体調同様、テスターは医師の診察でアドバイスを受ける必要があります。
乗り物酔い
サイバー酔いが乗り物酔いの一種であるため、乗り物酔いの病歴のある人は、VRの使用時に同じような感覚を体験する可能性が高まります。
内耳感染
内耳感染や内耳炎は、目まいや平衡感覚の問題を発生させる可能性があります。内耳感染がある人は、VR製品のテストには適していない可能性があります。
目のコンディション
両眼視野の異常は、VRの使用と両立しない可能性があります。これには、片方の目の視界がもう片方の目の視界と調整されない状況が含まれます。この場合両眼は、1つの焦点に再調整しようとする緊張下にさらされます。既存の眼精疲労が、1つの焦点の達成における困難と組み合わされると、両眼視機能に異常がみられる人にとってVRのテストが不適切であることになります。
既存の視力条件のないVRテスターにとっても、テスト中に定期的に視力チェックをすることは重要です。「目が重かったり疲れたりしていませんか?」、「目が緊張しているよう感じますか?」や「視力はどうですか?」といった質問を、休憩中に定期的に行う必要があります。
これら質問は、自己チェックの忘備録として、そして時間間隔を置いた口頭での質問として、文面化された安全性チェックの一環として取り込む必要があります。定期的な目の検査も推奨されます。
医療装置
VRハードウェアの中には無線電波を発信するものがあり、ペースメーカーなど体内に埋め込まれた医療装置の通常機能に干渉する可能性があります。
てんかん
VR装置を使用中に発作が発生するリスクの増加は、てんかん患者やてんかんの症状を持つ者にはテストが不適切である可能性があることを意味しています。
上肢障害
上肢障害のある人は、テスターが体験するVRを長時間プレイすることにより、症状が悪化する可能性があります。
VR体験
VR環境で過ごす時間が増加することにより、経験豊富なテスターは耐性を身に着ける場合があります。耐性はテスターごとに異なりますが、長時間の使用ではなく短時間の使用を頻繁に行うと身につく可能性が高まります。
テスト時間
VRは、時間プランニング、タスクのスケジューリング、そしてプロジェクト管理の変数に関して十分に考慮を行うことを要求しています。
テスターはバーチャル環境内で、あるいはVRヘッドセットを装着して、週40時間テストすることはできません。このニーズは、弊社のプロジェクトスケジューリングで説明する必要があります。テストのプランニングの際、通常のテストプランと比較して50~75%の生産時間を目標とし、この幅のうち少ないほうから常に始めるようにします。VRテスターに対しては定期的で頻繁な休憩を織り込むことも重要です。特に初期段階においては、これは重要です。
スケジューリングの際には、大半のバグ再発が2D環境で起こり得ることを考慮してください。
テスト環境
VRテストに関わるいかなる組織であれ、物理的なテスト環境をまずアセスメントすることが欠かせません。 ここで問われるべき主な質問は、「現在の設備が高度な基準のVRテスト環境を作成する能力があるか 。 すなわちテスト業務において安全な環境を提供するか?」です。 以下に、取り組むことが重要だと私たちが信じるガイドラインのいくつかを示します。
考慮すべき点がたくさんありますが、VR専用の環境を作成することが欠かせません。このため、通常よりも広いデスクエリアが必要となり、15~20%広く取る必要があります。プレイ中には、幅広く十分に移動できるスペースがあることが欠かせません。このエリアは明確に標識で示して維持することで、この環境に他の人が持ち込む障害物がないようにすることが必要です。
ケーブルや装置は整理整頓して、テスト領域に危険がないようにしてください。直射日光がテスターに影響を与え、VRレンズを燃やす可能性があるため、テスターに最大の快適性を提供し、テスト装置を保護するために、光のブロッカーは欠かせません。
複数のVR装置を使用する場合、キットが近づきすぎると赤外線センサーが「クロスオーバー」する可能性があることを意識することが大切です。これにより「ゴースティング」が発生し、2つの画像がテスターには1つの画像として表示される場合があります。これはテスターの方向感覚を狂わせるだけではなく、ニセのバグを作り出してプロジェクトに直接影響を与える可能性があります。
安全を感じる
VRのテスト時に、スタッフが快適性を感じる必要があることは、言うまでもありません。バーチャルワールドに没入するようテスターに依頼することは、現実世界に対して実質上盲目で、そのため危険であることを意味します。テスターが快適であり、体調がよく、テスト環境が適切であることを監督および確認する人が常に付き添う必要があります。
テスターは周囲の人が快適であり、体験中に誰も干渉したり中断したりしないと信頼できる必要があります。テスターが自らの役割に完全に没入する体験を行う必要があるため、このことは特に重要です。
VRに関して新規スタッフに完全な情報伝達や研修を行うことは、優先事項です。これには、チームサポートの重要性、そして赤外線センサーの鑑賞の危険性に関する警告を含む必要があります。
健康と安全上の義務
健康と安全に関する法令とアドバイスは、国によって異なります。多くのガイドラインでは雇用者に、危険性や危険性からのリスクを特定し、リスクを制御する方策を実施するよう勧告しています。
一般体に健康と安全に関する慣行の責任は、雇用者と従業員の両方にあります。
健康と安全性の基準の遵守のため、VRテスト関係者は全員以下のことを行う必要があります。
結論
バーチャルリアリティは確かに近年の技術における最大の話題の1つであり、品質保証を主眼としてきました。
VRテストへの需要は高まっており、これは今後も継続する見込みです。テストへの参加を希望する組織は、専門のVRプロセスを導入する準備を完璧に行う必要があります。これによりプロジェクトが予定通りに進み、テストスタッフの安全性が保護され、期待される高水準の結果が保証されます。
2014年初頭より3年以上VRテスト体験を有するPTWは、以下の最善例を推奨します。
VVRテスト企業を探しているVRコンテンツオーナーは、テストを実施する可能性のあるパートナーが上記全てを考慮し、各分野の注意を実証できることを確認する必要があります。
ゲーム開発者は、スタッフの安全性、そしてプロジェクト全体の結果における悪影響の可能性を十分に検討しない企業との業務は希望しません。
最後に、VRの発展や進歩が継続している中で私たちは、VRテストへの最善例、業務文書、手続き、心理的配慮や物理的環境の推奨が、歩調を合わせる必要があると信じております。すなわち、定期的なアセスメントや改善が必要というわけです。新しい装置は新しい課題をもたらし、これに取り組むプロとして私たちは、最もタイムリーで安全かつ熟練した方法で、これらへのアセスメントを行い適合していく必要があります。